AKANET2号

安全を考える PART2

           −綜警センター−

 今回は94年に竣工した「綜警センター」の設計を通じて

「安全性」について考えながら、作品の紹介をいたします。

 この建物は、「綜合ガードシステム」で知られる綜合警備保

障株式会社の創立30周年記念事業の1つとして計画された、

都内全域をガードする指令センターです。

 このビルの特徴の第1は最上階にこのビルのオーナーが住み

それ以外の階を綜警がテナントとして一括使用する複合用途の

建物で、それぞれの用途区分を明確にした計画とされているこ

と。第2に、人々の安全を守る事を業務とする会社の指令セン

ターであり、建物自体に極めて高度な安全性への配慮がなされ

ていることがあげられます。

<事務所・住宅共存のための特徴>

 この地で1世紀半の歴史を持つビルのオーナーの要望は、あ

くまでこの土地に住み続けながら土地の有効利用をはかる事で

した。そこで最上階にオーナー住居を設けましたが、階段、エ

レベーター、エントランス、駐車場等をはじめ、電気・設備系

統を含めすべて事務所部分とは完全に分離独立させています。

さらに住宅部分における火災、漏水、漏電、防犯等は様々なセ

ンサーにより綜警にて監視されています。

<最上階オーナー住居の特徴>

 最上階外周部に屋上庭園を設けることにより外部からの騒音

や視線を遮断し、住居としての快適性を高めています。

 また屋上の中庭を介して2つのゾーンに分けた二世帯住居と

しお互いのプライバシーを確保しつつ、さらに将来の三世帯住

居にも対応出来るよう仕掛けも考慮されています。

<建物自身が持つ安全性とセキュリティシステムの特徴>

 事故や災害のときにその機能をフルに発揮出来るよう、安全

率を高く設定した構造体としていることはもちろんですが、大

地震からコンピューター機能を守るための免震床の採用、停電

時における長時間稼働可能な無停電自家発電装置の設置、万一

の都市型豪雨に備えての防潮装置の設置等々を装備しています

 さらにセキュリティシステムとして、防犯・防災の他、入退

室管理、各室の電灯管理、館内空調の最適管理等を一括中央監

視しています。これらはもちろん綜警の開発した最先端システ

ムです。

 また省エネと同時にこのコンピューター発熱を適切にコント

ロールし快適な執務空間を創るために、床下空調システムを採

用しているのも特徴です。

<内部空間及び外部デザインの特徴>

 現在主流となっているセキュリティシステムは、通信回線に

よる遠隔監視システムです。指令センターである以上、通信配

線及びコンピューター配線が自由に敷設出来るフロアシステム

さらに光ファイバーの配線スペースを十分確保した電気シャフ

ト等のインテリジェント化は当然のこと、将来の通信衛星によ

る遠隔監視システム等に対応出来る仕掛けも備えています。

 こうした機能の中枢として巾40メートル、奥行き16メー

トル、高さ6メートルの司令室があり、この司令室は綜警の仕

事を広く知ってもらうために見学通路を介して一部公開されて

います。

 外部デザインの特徴としては、全面に磨きの御影石を貼り、

連続した小窓が綜警の企業イメージである安心感と風格をかも

し出しています。また測道沿いに公開性のある大空間を設け、

近隣環境への配慮も十分なされています。


オーナーからのコメント

                  村田 兼松

 今回の事業計画において特に重視した点は、建物を安定した

テナントに長期的に借りていただくということでした。そのた

めには、テナントの要望に対応できる、しっかりしたプランに

基づいた設計施工をしていただく必要がありました。

 多数の業者の方々よりプランをいただきましたが、茜設計の

プランは、法規の枠組みの中で最大限その要望に応えるべく吟

味されたものでした。

 また、竣工したビルの評判も良く、テナントである綜合警備

保障株式会社様より高い評価をいただき安心しております。

 ところで、ビルの建設には様々な問題が伴いますが、予定通

りに竣工することができたのは、皆様の御協力によるものと確

信しております。このビルの建設を通じて、信頼できる設計・

監理・施工が、オーナーにとって最も重要な要件であるという

ことを改めて痛感している次第です。

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