AKANET創刊号
教訓を生かした建物づくり 弊社では、かねてより免震構造の基礎的研究を行ってまいり ましたが、オーナーの理解がなかなか得られず実現には至りま せんでした。現在西池袋で鹿島建設によって工事が進んでいる 造で設計し震災前既に建築確認を取得しておりました。しかし あの惨状を目の当たりにし、初めてご理解が得られ、急遽設計 変更されたものです。 さまざまな技術的検討の結果、二階の床下に免震措置を取り 付ける「中間免震工法」としました。共同住宅での中間免震は 我が国初の試みであり業界の話題となっております。 又この建物は2階から13階に賃貸住宅83戸、14階には オーナー住宅2戸が設けられていますが、経営的観点からもノ ーリスク・ノーマルリターンの事業手法が採用されています。 完成した賃貸住宅はすべて「都民住宅」として東京都住宅供 給公社が20年一括して借り上げ、管理運営する契約になって いるのでオーナーは煩わしさから開放されます。又採算的には 建物費の約10パーセント強の補助金と、利子補給された超低 金利の公的資金とを利用する事ができるので安定した事業とな ります。さらに、数々の税法上の減免措置が適応され、節税効 果も十分期待できます。 このように深野ビル(建物名「MFビル」)は、技術的にも経 営的にも「安全」を重視した建物企画で、茜設計の多年にわた るノウハウが遺憾なく発揮されたものです。
完成したMFビル(仮称 深野ビル) |
オーナーからのコメント 免震集合住宅への設計変更の決断 AKANETの創刊にあたり、心よりお祝い申し上げ ます。 私共のビルの建設に関しましては、日ごろより多大な るご協力をいただき感謝しております。 さて、、阪神・淡路大震災の起こった日は、奇しくも 私の誕生日でありました。大震災の惨状をテレビで見る につけ、今度の私共のビルは東京に大地震のあった場合 一体どうなるのだろうかと内心気にしていた時に、茜設 計より免震集合住宅への設計変更のすすめがありました。 まず、お話を聞き、コストアップの事が気になりまし たが若干のコストアップですむならば、この建物は共同 住宅用につくるので、住民が安全を感じ、安心してすめ る環境を提供すべきだと判断しました。 すでに建築確認はとっておりましたが、意思決定後の 免震構造への茜設計の変更対応は、スピーディーで、世 間で言われていたよりもとても早く、新たに免震建物の 建築確認が取れました。 ビルの建築がすすむにつれ、私の友人、知人をはじめ 街の方々からも免震構造の私共のビルへの注目の声が多 く寄せられております。 一年後の完成(平成9年3月竣工)を心待ちにしており ます。 深野 守弘
各紙に記事がとりあげられた |