AKANET創刊号

地震に強い建物づくり

免震構造一般化の時代へ

  阪神大震災では、わずか二十秒間の揺れで十万戸もの住宅が全壊

し、家具類の転倒事故も含め死者は6300人にものぼりました。しか

も死者の半数以上は60歳以上の高齢者だったと報じられています。一

瞬のうちに約10兆円にも登る住居家財・都市基盤の被害と、尊い命が

失われた都市の直下型地震は、底知れぬ恐ろしさと同時に、「安全性」

とは何かを改めて問いかけられることになりました。

  従来は建物が壊れなければ安全とされておりましたが、震災後は地

震の揺れによって室内の機能が損なわれないような建物が求められるよ

うになり、安全性に対する要求は一段と厳しいものになりました。

  建物の設計法には「耐震設計」と「免震・制震設計」等があります

耐震設計法では建物を丈夫にすればするほど地震時には激しく揺れる欠

点があります。

  これに対して免震構造は建物本体と基礎の間に、クッションの役目

をするゴムと鉄板を多層に重ねた支持装置を挟む事によって、本体の揺

れを吸収する工法です。従来工法に比べて地震時の揺れは1/3から1

/5になり、大地震でも金魚鉢の水がこぼれない程の信じられない小さ

な揺れとなります。

  このような理由で免震構造が「安全を売る技術」として注目を浴び

るようになったのです。

大規模地震に見舞われた場合の建築物

免震ゴム

 

 免震構造の効果は、サンフランシスコの地震の時地震

の最中でも外科手術が続行できた事で一躍話題となりま

した。今回も阪神地区で完成していた2棟の免震建物が

何れも予測どおり1/5程度しか揺れなかったと報告さ

れ高い安全性が立証されました。このため昨年1年間で

過去10年分を上回る免震建物が設計されました。

  慎重に検討を進めていた行政も本格的採用に踏み切

りはじめています。たとえば大阪市中央公会堂は免震構

造で保存工事をする事が決まりましたし、東京都でも知

事公館を免震構造で改築する事になりました。

  さらに東京都は、免震構造建物の普及は震災対策上

有効だとし、今後民間への支援措置を検討するとともに

煩雑な手続きを簡素化するように建設省に働きかけると

議会で説明しています。このような状況の流れを受けて

建築主の意識は変りはじめています。免震構造は今まで

はコンピュータビルや博物館などの一部の建物にしか使

用されませんでしたが、今後は病院や集合住宅など、直

接人名に係る建物へも積極的に使用され先端技術を使

った安全性の高い建物の一般化の時代がようやく訪れ

ようとしています。

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