防音構造の仕様の選定

 実際の設計では、二重サッシ、防音ドア、遮音材など各種防

音材を供給する立場であるメーカーとの打合せが不可欠である

 まず、設計事務所が施主さんの要望を詳しく聞き、各部の防

音構造を概略設定してメーカーにもちかける。

 音響エレメントとしての各材料の性能はカタログを見ればわ

かるが、カタログとにらめっこしながら、壁・床・天井・開口

部の各部位につき材料を一つひとつ拾って組み合わせ、理想の

音響を実現しようという方法では手間と時間がかかりすぎる。

そこで、メーカーの側でも要求性能別にコースをいくつか用意

していて、ベースとなるコースを選択したうえで、コストをに

らみながら材料の組合せ、コーディネートを検討していくわけ

だ。

 今回の物件では、松下電工の防音システム「レベル3」でい

くことになった。このレベル3というのは、同社が設定してい

るグレードでは最も高い部類に当たるコースで、本格防音+音

響調整の、ハイレベルの音響性能を求める場合に採用される。

目標とする遮音量は空間透過損失50dB以上で、壁、床、天井の

いずれもコンクリート躯体から浮かしている。


開口部

窓は、遮音能力30dB以上のアルミ二重サッシを採用している。

空気層は約150o、ガラス厚は、6.8oおよび6.0o。ガラスは

違う厚さのものを組み合わせると効果的。

ドアは、高密度のパーディクルボードを芯材として遮音シート

をはさみ込んだ構造で、遮音性能は30dB以上。また、気密性の

高い防音室に不可欠のエアコンと新鮮空気取入れのための熱交

換器ファン(ロスナイ)は、壁付けになっている。

天井

ロックウール吸音板で、音の放射・拡散効果を出している。

 

水まわり

パイプやダクトなどが個体伝搬音を伝える結果、斜め上などの

住戸に演奏音が伝わってしまうのはよくあることで、十分な防

振処理が必要だ。なお玄関ドアの向こうは細い路地をはさんで

民家と隣接しているので、水まわり空間は前室の役割も果たし

ている。密閉空間ということで、暖房熱源はガスでなくシーズ

ヒーターを設置している。

直張りか浮き床かは選択に悩むところだが、今回は床を浮かす

方法をとった。低音域つまり重量衝撃音に対しては、スラブの

剛性と質量を高めることで、中・高音域の軽量衝撃音に対して

は、緩衝材(グラスウール)の柔らかいバネで吸収するのが、

床衝撃音対策の基本になる。浮き床の場合、低音域の吸音に効

果があるので、スラブがある程度薄くても、軽量・重量衝撃音

ともに遮断できる。

ワンルーム型マンションで、ピアノ室同士が壁1枚隔てて隣接

するという、非常に厳しい条件のため中空二重壁構造を採用し

て万全を期した。

 

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